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深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
JAEA-Review 2009-041, JAEA Takasaki Annual Report 2008, P. 145, 2009/12
最近、高速の電子ビームを結晶表面に低視射角で入射させた時に生ずる表面プラズモン励起の研究が行われ始めた。しかし、陽電子による表面プラズモン励起過程はほとんどわかっていない。陽電子は、結晶表面に対して浅い角度で入射すると全反射を起こす。したがって、陽電子による表面プラズモン励起過程は電子とは異なると予想される。本研究では、理想的な自由電子系であるアルミニウム単結晶表面からの全反射した陽電子のエネルギー損失スペクトルを測定した。測定したスペクトルには、約12eV間隔で現れる5つの明瞭な損失ピークが観測された。アルミニウムの表面プラズモンエネルギーは11.3eVであるので、これら一連の損失ピークは表面プラズモンの多重励起に対応する。エネルギーを損失していない弾性散乱ピークは小さく、3回表面プラズモンを励起した損失ピークが最も強いことがわかった。解析の結果、アルミニウム表面における表面プラズモンの平均励起回数は2.8回であることがわかった。全反射した陽電子は結晶の最表面近傍を飛行することにより、結晶の電子による遮蔽効果を受けにくい。したがって、結晶表面と相互作用する距離が伸びることにより、表面プラズモンの励起回数が増大したと考えられる。
佐藤 達彦; 佐藤 大樹; 遠藤 章; 執行 信寛*
no journal, ,
高エネルギー加速器施設、マイナーアクチノイド(MA)を含む核燃料の製造及び再処理工程における放射線安全を確保するために、幅広い範囲の強度・エネルギーを持つ中性子・光子による線量及びエネルギースペクトルを高精度かつ高感度に測定可能な可搬型の次世代放射線モニタDARWIN-Pを開発している。DARWIN-Pの高線量率環境における応答特性を検証するため、TIARA準単色中性子場において、そのビーム電流を変化させながらDARWIN-Pの照射試験を実施した。その結果、DARWIN-Pは、バックグランドレベル(約10nSv/h)から約10mSv/hまでの幅広い範囲の中性子線量率を的確に測定可能であることがわかった。この成果により、DARWIN-Pの高線量率環境での適応性が証明された。
佐伯 誠一; 長澤 尚胤; 廣木 章博; 森下 憲雄; 玉田 正男; 工藤 久明*; 勝村 庸介*
no journal, ,
カルボキシメチルセルロース(CMC)等の多糖類誘導体は、高濃度水溶液条件下において放射線架橋し、ハイドロゲルとなる。本研究では、放射線架橋型多糖類誘導体の水溶液中における放射線誘起反応機構を明らかにするため、CMCをモデル物質として、放射線架橋に関与する多糖類誘導体ラジカルの同定を目的とした。高分子水溶液中における放射線架橋反応は、水の放射線分解生成物であるOHラジカルにおもに起因する。そこで、OHラジカルの生成源として、過酸化水素の光分解及び電子線照射による水の放射線分解を用い、OHラジカルとの反応により生成するCMCラジカルのESR測定を行い、比較検討を行った。結果、両実験において同形スペクトルが観測され、カルボキシメチル基炭素上ラジカルの存在が明らかとなった。また、本実験装置・手法の時間分解能から、測定されたカルボキシメチル基炭素上ラジカルは非常に長寿命であることがわかった。
山口 真; 田口 光正
no journal, ,
高レベル放射性廃棄物の地層処分において、金属容器の嫌気性腐食で発生した溶存水素が地下水の線分解に与える影響を検討するため、過酸化水素水溶液のヘリウムイオンビーム照射試験を行った。アルゴン飽和の場合、過酸化水素濃度は吸収線量に伴い直線的に増加したが、水素飽和の場合には照射により過酸化水素濃度は著しく低下した。この結果は均一系の反応モデル計算で再現された。
田中 伸幸; 八巻 徹也; 浅野 雅春; 前川 康成; 小貫 薫
no journal, ,
熱化学水素製造法ISプロセスの効率化のためには分離膜を用いてヨウ化水素酸を共沸濃度以上に濃縮するプロセスが必須であり、ヨウ化水素の効率的な濃縮操作に適切な優れた性能を持つ高分子電解質膜の開発が重要な課題となっている。本発表では、原子力機構が燃料電池用に開発した放射線グラフト法による高性能な高分子電解質膜を、ヨウ化水素濃縮に適用した結果等について報告する。実験結果をもとに、従来の膜と比較して、実用条件に近い100Cにおいて、濃縮操作に必要な消費エネルギーが最大で約40%削減できることが明らかとなった。このことから、放射線グラフト法による高分子電解質膜をヨウ化水素濃縮に適用することにより、大きなエネルギー削減効果が得られる目処を得た。
星 陽崇; 菊池 孝浩; 森田 泰治; 木村 貴海
no journal, ,
新規に調製したCsSr吸着剤の線に対する耐久性を評価した。濃度の異なるの硝酸溶液にCs吸着剤及びSr吸着剤を浸積させた状態でCo線源により線を照射し、線照射時の硝酸濃度の影響を調べた。照射後の吸着剤をろ過後、乾燥させ、Cs又はSrの飽和吸着容量をバッチ法により測定した。Cs吸着剤,Sr吸着剤ともに高濃度の硝酸中では硝酸濃度の増加に伴い、飽和吸着容量が低下する傾向が現れた。CsSr吸着剤の飽和吸着容量は線照射後に低下したが、含浸させた抽出剤が液相に溶出することが原因であり、線照射による劣化の寄与はわずかであることがわかった。線を照射した吸着剤を用いて模擬高レベル廃液からのCs及びSrのカラム分離試験を行い、それぞれ照射後もCs又はSrに対する高い選択性を維持していることが明らかになった。
箱田 照幸; 島田 明彦; 松本 加奈江*; 広田 耕一
no journal, ,
本研究では、水分を含む窒素ガスに、最大10kGyで電子ビーム照射した際に生成するOHラジカルの量を、OHラジカルとCOとの反応により生成するCO濃度から評価した。OHラジカルはNの電子ビーム照射により生じる窒素イオンと水分との反応で生成するため、事前に、10kGy以下の線量でOHラジカルの生成に必要な水分濃度や、このOHラジカルの捕捉に必要なCO濃度を調べた結果、水分濃度は8000ppm以上,CO濃度は2000ppm以上が必要であることがわかった。そこで、この条件でCO濃度を測定したところ、CO濃度は線量に対して比例関係にあり、この傾きからOHラジカルの生成のG値は4.9であることを明らかにした。
野上 雅伸*; 杉山 雄一*; 川崎 武志*; 原田 雅幸*; 池田 泰久*; 菊池 俊明*; 川田 善尚; 森田 泰治
no journal, ,
現在開発中のFBR燃料用高度化沈殿法再処理システムにおいては、燃料溶解液中のほぼ全量のU及びPuを沈殿分離した後の廃液に低濃度のU及びPuが残存する。このU及びPuの分離除去法として、不水溶性ポリマーであるポリビニルポリピロリドン(PVPP)を用いた吸着法を検討している。本研究では、PVPPの硝酸水溶液中での耐放射線性を線照射試験により検討した。硝酸濃度を最大6mol/dm(=M)としたPVPPのスラリー状試料に、室温,線量率3.6kGy/h,最大線量0.90MGyで線を照射した。試料の安定性は、照射前後のU(VI)に対する吸着容量の変化より評価した。その結果、いずれも吸着容量の顕著な低下は認められず、6M硝酸系試料ではむしろ吸着容量が増加した。これより、PVPPは広範囲な硝酸濃度条件において、線照射下での約10日間の運転によってもU(VI)の吸着性能が維持されることが明らかとなった。照射によりPVPPのピロリドン環が開環するとともにシュウ酸等の低分子フラグメントが生成したことを考慮すると、残基の中にU(VI)に対する選択性がPVPPよりも高い構造のものが存在していることが示唆される。
志風 義明; 谷村 嘉彦; 三枝 純; 内田 芳昭; 堤 正博; 吉澤 道夫; 原野 英樹*; 松本 哲郎*; 金子 広久
no journal, ,
20MeV以上の中性子エネルギーに関しては、中性子校正場が国内外で整備されていない。そこで、原子力機構・高崎量子応用研究所TIARAの数十MeV領域の高エネルギー準単色中性子照射場を利用して、標準校正場の開発を進めている。校正場を開発するうえで、フルエンスを精度よくモニタする手法を確立する必要がある。ところが、ターゲット付近のオフラインに設置してある既存のモニタは照射する中性子を直接モニタしているわけではない。そこで、プロトタイプの特性評価の結果をもとに感度向上のために集光効率を改良した、薄厚プラスチックシンチレータからなる透過型フルエンスモニタを開発した。TIARAの中性子照射場において照射試験を行い、その特性を評価した。
横田 渉; 佐藤 隆博; 奥村 進; 柏木 啓次; 宮脇 信正; 倉島 俊; 吉田 健一; 神谷 富裕
no journal, ,
原子力機構・高崎量子応用研究所のTIARAにおいて、サイクロトロン用の集束式マイクロビーム形成装置を用いて高速シングルイオンヒットシステムの開発が進められている。昨年度に目標のシステム性能を達成したが、シングルイオンヒットの実用のために解決することが必要な二つの課題が見つかった。一つは狙った1点に複数のイオンが当たる多重ヒットで、全ヒット数の数%を占めた。他の一つは狙った点にイオンが当たらないミスヒットで、全ヒット数の10%以上に上ることがある。多重ヒットはシングルイオンヒットの検出システムの応答速度を高めることで1%以下に抑えることができたが、ミスヒットについては集束装置のマイクロスリットにより散乱されたイオンにより生じている可能性が高いことがわかった。
藤巻 秀; 河地 有木; 鈴井 伸郎; 石井 里美; 伊藤 小百合; 山崎 治明; 石岡 典子
no journal, ,
安全な食糧の安定供給は、言うまでもなく、人類共通の目標である。しかしながら、不良環境の増大など、今後の農業をとりまく状況は厳しい。「吸収」「同化」「移行」「蓄積」などから成る植物の物質輸送機能を人為的に制御し、利用することが農業の本質であり、これらの機能の研究は食糧生産上の諸問題の解決に対して重要な役割を担っている。われわれはこれまで10年以上に渡り、ポジトロン放出核種で標識したさまざまなトレーサを製造し、光合成産物,硝酸イオン,鉄,亜鉛,マンガンなどの栄養、またカドミウム,バナジウムなどの有害物質が生きた植物体内を移行する様子を撮像し、その挙動を解析してきた。さらに、実用的な知見を得るために「炭素固定速度」などの定量的情報を数理的解析によって動画像データから導くアルゴリズムの開発を進めてきており、環境応答に関する研究を行っている。本発表では代表的な研究例を紹介し、今後の展望について述べる。
熊谷 友多; 永石 隆二; 山田 禮司
no journal, ,
酸性水溶液中での二クロム酸イオン照射還元の反応経路に対するシリカゲルの添加効果を理解するため、OHラジカルの捕捉剤として-butanolを用いて、シリカゲル共存下でのOHラジカルの反応と二クロム酸イオンの還元収量との関係を調べた。-butanolによってOHラジカルが捕捉される条件では、シリカゲルの共存による還元収量の変化は認められなかった。この結果から、10wt.%程度の添加量では、シリカゲルの添加による還元促進は、おもにOHラジカルの酸化反応の抑制によるものであり、水分解生成物の収量変化による効果は小さいことがわかった。
駒 義和; 渡部 創; 松村 和美; 佐野 雄一
no journal, ,
高速増殖炉使用済燃料再処理において発生する高レベル放射性廃液からAm及びCmを回収する技術として、抽出クロマトグラフィーの開発に取り組んでいる。スチレン-ジビニルベンゼン高分子を被覆した多孔質シリカ粒子の支持体にTRPEN(tetrakis(alkylpyridylmethyl)ethylenediamine)抽出剤を保持した吸着材の線耐性を調べた。吸着容量に関して、一般的な抽出剤の場合と異なる線量率依存性を示した。
石井 里美; 鈴井 伸郎; 伊藤 小百合; 石岡 典子; 河地 有木; 大竹 憲邦*; 大山 卓爾*; 藤巻 秀
no journal, ,
ダイズは根粒菌と共生して根粒を形成し、根粒菌が固定した空中の窒素を利用している。根粒は固定した窒素(固定窒素)を他の部位に輸送することで植物体に窒素栄養を供給する役割を持つ。ダイズ植物の成長や、ダイズ子実の生産量を増やすためには窒素固定や固定窒素の輸送といった窒素の動態を定量的に解析し、制御することは重要である。窒素固定や固定窒素の輸送は光や温度といった環境の変化に対して短時間の間に生理的な応答を示し、数時間内に変化する。したがって、環境の変化に対する窒素固定や固定窒素の動態の数時間内における変化を解析するためには非侵襲的な方法が必要となる。本研究では、放射性同位体のN(半減期9.97分)により標識した窒素ガス(N)とPETIS(positron-emitting tracer imaging system)を用いることにより、窒素の固定及び固定窒素の輸送の非侵襲的なイメージングを実現した。
菊地 郁*; 河地 有木; 石井 里美; 鈴井 伸郎; 石岡 典子; 伊藤 小百合; 本多 一郎*; 藤巻 秀
no journal, ,
ナス栽培では、病虫害低下や受光率上昇の目的で摘葉を行う。しかし、現状では各個人が経験的知識をもとに独自の判断で摘葉を行っており、その指標となるような基礎的知見は得られていない。適切な時期に適切な葉を摘葉するためには、各葉から果実へ移行する光合成産物の蓄積機構を明らかにすることが重要と考えられる。既にポジトロンイメージング装置(PETIS)を用いて、ナス植物体の葉から果実内部へ移行するC-光合成産物の可視化に成功し、果実へ移行したC-光合成産物を定量的に解析する方法を報告した。PETISは非破壊計測であることとCの半減期が20分と短いことから、同一個体による繰り返し計測が可能である。そこで個々の葉が果実の光合成産物蓄積機構に及ぼす影響を明らかにするため、上記方法を用い、同一個体でCOを施与する葉位を変え、果実へ移行するC-光合成産物の移行量などの解析を行った。結果、葉位によって葉から果実へ移行する光合成産物の分配部位及び量が異なることが明らかとなった。
河地 有木; 鈴井 伸郎; 石井 里美; 伊藤 小百合; 石岡 典子; 藤巻 秀; 菊地 郁*; 渡部 浩司*
no journal, ,
近年のRIイメージング技術の革新が生体内のさまざまな分子動態の可視化を可能にした。これによって、研究者はより容易に対象となる生体の機能を明らかにし、生命を理解できるようになったと言える。発表者らはポジトロンイメージング装置(PETIS)を用いて、植物体の葉から果実内部へ移行するC-光合成産物を計測し、果実へ移行する炭素動態を定量的に解析する方法を報告した。しかしながらPETISが撮像可能な次元は2次元であるため、3次元的な構造を持つ果実内の炭素動態を可視化するには不向きである。そこで、3次元撮像に実績のあるポジトロン断層法(PET)装置を用いた実証実験を試みた。PET装置はmicroPET Focus 120を使用し、視野内に大小二つの果実が付いたトマトを供試した。約100MBqのCOを果実直下葉に吸収させたところ、30分で果実にC-光合成産物が到達し始め、1.5から2時間後には果実内部への移行様式が可視化されるなど、PETによる果実内炭素動態の撮像に初めて成功した。大小二つの果実に流入する炭素動態を解析したところ、ほぼ同量のCが同時に移行している。つまり、果実(小)には新鮮重あたりで86倍のC-光合成産物が移行しており、トマト果実の成長期におけるシンク能の高さが示されている。PETISと同様に、PETを用いた植物研究、特に3次元的な構造を持った対象におけるRIイメージング植物実験の有用性が示された。
渡邉 茂樹; 渡辺 智; Liang, J. X.; 花岡 宏史*; 飯田 靖彦*; 遠藤 啓吾*; 石岡 典子
no journal, ,
Cuは半減期12.7時間の放射性核種で、半減期が従来のPET核種であるF, Cに比べて長く、安定な標識薬剤を得やすいなどの特徴を持つことから、新規PET核種として医学分野での利用が期待されている。これまでCuの分離・精製には陰イオン交換法が一般的に用いられてきた。しかし、この方法は高濃度(26M)の塩酸を大量に必要とすることや、Cuの安定した分離が難しいことなどから、医学利用での普及に課題を抱えている。そこで、これらの課題を克服する新規分離法として従来法に比べ低濃度の酸溶液でCuを選択的に分離することが期待できるキレート交換法に着目し、本法を用いた新規製造法を開発し、医学利用への可能性について検討した。その結果、0.11Mの低濃度の塩酸を用いることで選択的に放射性Cuを分離できることが示された。また、本法を用いてCuの製造を行った結果、平均回収率は89%(n=12)で、放射性核種純度は99%以上であった。比放射能は1095GBq/molで、これまでの報告と比べ高い値であった。最後に抗体標識実験を行った結果、平均標識率は88%(n=3)であった。このことから今回開発した新規製造法は従来法と同程度の回収率を維持しながら、低濃度の塩酸を用いてCuを製造することが可能であることが示された。また、得られるCuは高純度・高比放射能を有しており、医学利用可能であることが明らかとなった。
鈴井 伸郎; 伊藤 小百合; 河地 有木; 石岡 典子; 藤巻 秀; 中村 進一*
no journal, ,
近年われわれのグループでは、ポジトロンイメージング技術及びCdのポジトロン放出核種であるCdを用いることで、植物におけるCdの動態を可視化し、地上部への輸送・蓄積の速度の定量化に成功している。しかしながら、根からCdを吸収するステップに関しては、投与するトレーサ溶液の放射能量がポジトロンイメージング装置の定量上限値を越えるため、定量化が困難であった。そこで本研究では、ポジトロンイメージング装置のダイナミックレンジを補う多点式ポジトロン検出器を用いて、トレーサ溶液の放射能量の経時変化を測定することで、Cdの吸収速度の定量化を試みた。ナイロンメッシュで上下を2つのコンパートメントに仕切ったシリンジ状の容器を作成し、上側に植物体(の根部分)を、下側外に多点型ポジトロン検出器を設置した。この容器に植物(セイヨウアブラナ)をセットし、10MBqのCdを含むトレーサ溶液を注入し、少量の空気をポンプで供給し続けることで溶液を撹拌しながら、トレーサ溶液の放射能量の経時変化を測定したところ、Cdトレーサ溶液の投与後24時間における放射能量の経時変化、すなわち植物のCdの吸収量の経時変化を測定することに成功した。得られた経時変化データが指数関数で近似できることから、本実験で用いた植物によるCdの吸収速度はトレーサ溶液のCd濃度に比例することが明らかとなった。
中村 進一*; 工藤 順一*; 頼 泰樹*; 服部 浩之*; 茅野 充男*; 鈴井 伸郎; 伊藤 小百合; 河地 有木; 石岡 典子; 藤巻 秀; et al.
no journal, ,
本研究では、プラナー型ポジトロン放出核種画像化システム(PETIS)を用いて、Cdの吸収・移行特性が異なる2品種のイネにおけるCdの動態を画像化し、それらを解析することにより、その機構の解明を目指した。実験材料にはCdを地上部に多く蓄積する品種の「長香穀」と日本型標準品種である「日本晴」を用いた。植物の根にポジトロン放出核種のCdを投与した後、Cdより放出されるポジトロンの消滅位置の2次元分布を連続的に得ることにより植物体内におけるCdの移行・蓄積を可視化したところ、長香穀における地上部へのCdシグナルの蓄積量が、日本晴と比較して数倍高い結果が得られた。
前川 雅樹; 河裾 厚男
no journal, ,
高ドーズのヘリウムイオン照射により、シリコン中に形成するヘリウムバブルを陽電子消滅法により観察した。50200keVで段階的にエネルギーを調節したヘリウムイオン照射(照射ドーズ量:210/cm,室温照射)を行い、消滅線のピーク強度(Sパラメータ)の熱焼鈍挙動を測定した。照射直後では注入欠陥によりSパラメータは上昇するが、300Cの熱アニールでは減少した。運動量分布測定及び第一原理計算による欠陥モデル比較の結果、これはヘリウム原子がトラップされた原子空孔・集合体であることがわかった。陽電子は1nm程度のサイズの欠陥クラスターに36個のヘリウムが充填された欠陥構造で消滅していると推測される。陽電子はヘリウムバブルと相互作用し、その生成消滅過程を検出できることが明らかとなった。